男の妾になってる友達と、久しぶりに会った。
妾と言ってもそれほど裕福な暮らしでもない。
私からみたら、そんな安い金で男の所有物になるくらいなら、さっさと別れて自分の人生を楽しんだほうが良いと思うけれど、彼女的にはその「安い金」が無いのだから仕方ないと言う。
生活のために男の妾、結婚してくれるわけでもなく。
夫と妾の旦那と、妾と私でゴルフ旅行。
男同士は元々ゴルフ仲間、女同士はその連れ同士。
何度かこうして一緒にゴルフをすることがある。
私はこの二人を、特に何とも思っていない。親しいわけでも仲が悪いわけでもない。
夫は女同士、歳も近くて話も合うと思っている様子。
男二人が後からくるカフェで、女二人で先にお茶することになった。
そのカフェは、コーヒーが500円、ケーキセットが800円。
ケーキも4種類から選べる。とても美味しそう。
午後少し遅い時間で、小腹も空いてるし断然ケーキセットがいいと、私は迷わずケーキセット。しかし妾の彼女は困惑顔。悩んで結局コーヒーだけを頼んだ。
「あら、甘い物好きじゃなかったんだっけ?それともダイエット中?」
いつもなら一緒にケーキも食べるであろう彼女に、そっと尋ねた。
もしダイエット中なら、目の前で一人でケーキを食べるのは申し訳ないとも思ったし、少しだけ食べても良い気分なら、一口味見してもらおうと思ったから。
「ううん、違うの…勝手に注文すると、彼に叱られちゃうから…」
「え、どうゆうこと?」
「さっき『先にお茶していて』って彼に言われたでしょう?お茶以外のものを頼んでると叱られちゃうから」
その差は300円。
しかもケーキセットはお得だし、ケーキは美味しそう。
その300円の贅沢を男が許さないと言うのだろうか。なんだか憐れになって
「ねぇ、ここのお茶代、私が持つからケーキ食べなよ」
と言ってしまう。
しかし彼女は頑なに「大丈夫、ケーキは要らないの」と首を横に振る。
少したって男達が合流して、メニューを眺めて二人ともケーキセットを頼む。
そこですかさず、妾が男に「私もケーキセットにしてもいい?」と尋ねた。
「なんだ、ケーキセットにしてなかったの?すればいいじゃん。どのケーキが良いの?」
と店員を呼んで彼女のケーキも頼む。
なんだかホッとした。
妾の男はそんな酷い人じゃないと思うけど、彼女の気の遣い方が異常で驚いた。
そもそも差額300円で文句言われるなら、自分で支払って好きなモノ食べればいいのに。
この時私は、この男と妾の関係が、どれほど面倒なものかをまだわかっていなかった。
(続く)