人妻の気紛れで自堕落な生活

人妻の夜遊びとか不倫とか時々仕事とか

二日間の恋人①

すごく久しぶりにシマリス君と温泉旅行。

何度か来たLINEを読まずに削除して、そのまま終わったと思ってたのに。

 

縁って不思議。彼氏にお別れLINEの返信をしたその日に、シマリス君からザオラルLINEが来てうっかり既読してしまい、うっかり返信してしまった。

 

久しぶりに温泉旅行いきませんか?

 

もしも気が乗らなかったらキャンセルしようと思って約束した。

LINEが来たあの日、私はすごく心が弱ってて、シンプルに分かりやすく私に愛を囁いて抱きしめてほしかったから、シマリス君がちょうどよいって思っちゃった。その程度の気持ちで復縁するなんて私もどうかしてる。

 

もしかして私の気が変わるかもしれないから、約束はけっこう後の日程にしてたし、もしかしたらこの弱ってる心は、他の男達から英気を養ってシマリス君と会う必要がなくなるかもしれないとも想像してた。だけどそれなりに時間と共に元に戻りつつあった私の日常は完全復活とは成らなくて、他の男達と逢って楽しい時間は過ごしてるけど、何か一つ忘れ物をした感覚のまま。

 

そのままシマリス君と会う約束の前日。私からはもう連絡しないと決めていた。このまま連絡が無ければ会わない。

 

明日、14時に●●に迎えに行きます

 

割と早めのタイミングでそんなLINEが来て、会えない時間を埋めるような近況報告やご機嫌伺いや、約束のリマインドなんかしなくても、必要な事はちゃんと連絡くれるもんだなぁって感心したりした。今まで私が気を利かせたつもりでアレコレやってたんだけど、無くても良かったのかと思うと、少し悔しい。

 

シマリス君とは、最初からイニシアティブの取り合いをしていて、どっちがより惚れさせるかって事に拘ってたと思う。3度もプラトニックなデートをして『お付き合いする』って形でスタートしたし、絶対に私に後悔させないと言ってくれたシマリス君の事を大事に思ってた。だけど彼と出会った頃の私は、やっぱり私の思い通りに男に愛されたかったんだと思う。そして思い通りにならないシマリス君を自分に嵌めてしまいたい願望が強かった。それは彼の方も同じで、最初から私が男一人に収まる女じゃないことは見抜かれてたし、そんな女が自分だけに夢中になるっていう妄想で、どうにか私を嵌めようとしてたと思う。

私達はある一部がよく似てる。だから私には彼の傷や痛みがよくわかる。目的や手段が良く分かってる。だからこそ自分の基地を守って相手の沼には落ちないように、だけど自分の沼には落としたくて様々な手段で戦ってきた。それは単に恋って訳でもなくて、でも魅力は感じてて、同じように痛みも手に取るようにわかってて。

その痛みを分かつ道具として、私を利用して欲しいとも思ったりした。そうしてもしも彼の傷が癒えたら、私の傷も癒えるのかもしれない。お互いの、届かない場所に届く手になるのかもしれない、そんな風に考えたこともあった。矛盾と葛藤、どこまでが自分の本心なのか、シマリス君と一緒にいる私は、時々自分が迷子になってた気がする。

当時はよくわからないで困惑と愉悦を繰り返してたのだけど、今振り返ると、当時私に何が起きてたのかよく分かる。心が近づくと嬉しかった。だけど近づくと痛みも感じて猛烈に辛かった。

 

私はシマリス君の中に自分を投影して、彼の中に映り出される自分が嫌だった。そんな深く考えず、アトラクションのような刹那な恋を楽しもうって頭では思ってても、会う度に深く深く好きになると同時に憎んでた。

そうして一度は心で捨てて、今度は自己都合で再会。私って酷い人よね。でもそれすらもきっとお互い様な程には似た者同士なんだろうな。何故このタイミングで私に連絡してきたのかわからないけど、シマリス君の方だって自分勝手な理由があるんだろう。

 

道路が渋滞していて、待ち合わせには少し遅れたけど、そのこともちゃんと連絡してくれた。思えばシマリス君はマメではないけれど、約束を破ったりリスケされたことは一度もない。

到着したシマリス君の車に乗り込む。久しぶりで少し照れる。

 

「久しぶり、元気だった?」

 

「うん元気やで。今日はこれからドライブ2時間コースや。よろしくお願いします」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

シマリス君は、久々にスーツではなく私服だった。ずっと忙しそうで仕事の合間に会ってた感じだったけど、少し落ち着いたのかな。前よりお肌がすごく綺麗になってる。ニキビ跡を気にして美容皮膚科に通ってるのは知ってたけど、それ以上に透明感が出て、元々白い肌が透き通るみたいに綺麗。やっぱ若さよねぇ、私も美容皮膚科は通ってるけど、ここまで成果でない。12歳の年の差を痛感する。まぁ普通に考えて、アラフィフBBAが、12歳も年下のそれなりのモテ男に抱かれるだけでも冥途の土産よね…

 

車内では、相変わらず社会情勢や経済や株の話をしながら、海沿いの綺麗な温泉ホテルに着いた。いつも通りチェックインしてお部屋に向かう。

 

「まずは温泉入ろうか」

 

えー意外、最近は個室に入った途端に貪り食うように抱かれてた。その少し乱暴な流れもイヤではないけれど、私はずっと、もっと丁寧に扱って欲しいとは思ってた。部屋に入って荷解きして、お互い背を向けて浴衣に着替える。こんなにお行儀よくお風呂に行くのは久しぶり、付き合い始めの頃みたい。

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一緒に部屋を出て大浴場へ。私は元々長湯な上に、風呂上がりに寝化粧もするから時間がかかる。そんな時は、いつもシマリス君は先に部屋に帰って仕事をしてる。

温泉はとても良いお湯で、露天風呂から海が見える。この海辺近くの温泉に来るのは3度目。アクセスも良いし海が好きだし、私が気に入ってる場所をシマリス君は気付いてる。

ふぅ…なんだか夢みたい。またシマリス君と温泉宿にいるなんて。硬派気取りのシマリス君は、一緒に歩いても手を繋いだりしないし、私の荷物を持ってくれることもない。一歩私の前を歩いて、時々そっと振り返る。私の男の中で一番年下なのに、一番貫禄がある。実際剣道で鍛えた大きな身体は、その佇まいで威厳さえ感じる。顔がやや大きくて足は少し短くて、決して今時の体型ではないけど、高身長で美しい肌をしていて、時にあどけない表情なのに鋭い眼差しのアンバランスさが、年齢にそぐわない色気にも感じる。悔しい程に浴衣が良く似合って、全く堂々としていて羨ましい。それにしても、12歳も年上の人妻を連れて、この人は何も感じないんだろうか…

私の頭の中は様々な事を考えて忙しい。

 

今回の宿は、好きな色浴衣を自分で選べるシステムだったので、私は青地に花柄の落ち着いた柄を選んだのだけど、これを広げて羽織ってみると、逆にかなり派手だった。夕方の風呂上り、落とした化粧をもう一度施して、勝負下着の上に派手な浴衣を着る私は、脱衣所にいた他の女性から見たら、完全に不倫妻だろうなぁ。

こうゆう時、シマリス君の堂々とした立ち姿を思い出して、私もそう振舞おうと頑張ってみる。だけど風呂場の姿見に映る自分を見て少し悲しい気持ちになる。まだ若いつもりだけど、シマリス君と出会った2年前よりは経年劣化を否めない。丹念に準備してきたつもりでも、こうして見るとシミも皺も白髪も気になる。シマリス君がこんなに時間もお金もかけて私と一夜を過ごすなんて、いつまで続けてくれるのかなぁ…

いや、こんなご時世、約束しても会えなくなる人だってたくさんいるんだし、そもそもシマリス君とはアトラクションみたいな刹那の恋なのだから、先々を悩んでも仕方ない。若い頃は想像もしなかった解決しない悩みを嘆いても仕方ない。この歳でこんな年下と付き合うなんて考え事も無かったんだし、それは幸せな悩みだろう。

 

気付いたら私はずっとアレコレ考えてる。純粋に燥げない。何か分不相応な気がして、その言い訳を探してる。それと同時に、シマリス君の気持ちを鑑みてる。セックスだけが目的なら、遠い温泉宿まで私を連れ出す必要は無いだろう。そもそも彼には他にも女がいるはずだ。私の何が良くてこうしてるんだろうか…

 

ただ、私の中では一度お別れした人なので、もうイニシアティブを取り合う戦争は降参した。白旗上げた捕虜、だから考えても仕方ない。彼にとって何かが良くて、たまにこうして私を連れ出す。それが何かは分からないけど、もうその事実だけで良いんじゃない?私よ。素直に甘えて抱かれて、二日間の恋を楽しもう。どうせここまで来たんだから、全力で彼を愛そう。

 

浴衣の襟元をさりげなく後ろに引いて、うなじを綺麗に見える角度に合わせる。頭で考えるより肌を合わせよう、その時私が何を思うのか、ちゃんと感じ切りたい。

【続く】

 

・・・

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