人妻の気紛れで自堕落な生活

人妻の夜遊びとか不倫とか時々仕事とか

相思相愛

その駅で待ち合わせるときは、私は必ず20分早く到着して構内の本屋に立ち寄ることにしている。本が好きで本に囲まれてるのが好きだし、元々待ち合わせよりは早く着いて待ちたい方だから。

 

寿クンと久しぶりに会う前日、私は私自身が怖かった。

会わない二か月の間、彼氏と別れ、リラックマ、宮迫クン、M男の3名との濃い蜜月を過ごした。感情がものすごく渦巻いて、捨てたつもりのシマリス君から連絡があって、うっかり約束してしまう程に気持ちも弱ってた。寿クンの無事が分かってから、ジワジワと溢れる恨み辛みの感情…勿論それらは私の寿クンへの甘えなのだろうと思っていたけれど、実際自分の気持ちがどう変わっていくかは私自身もわからない。実際寿クンに会った瞬間、私は何を感じるだろう。

過去の経験で、数か月会わずに再会したら、あっさりと気持ちが無くなっていたこともある。恋は障害があるからこそ燃えるもので、その障害が無くなった瞬間、私の情熱も無くなっているのかもしれない。

 

そんなことを考えながら本屋へ向かう。まだ待ち合わせの時間より30分前。

小さな本屋さんのコーナーの角から、最近の雑誌の表紙を眺める。ファッション誌かぁ…私の年代はどの雑誌買えばいいのかよくわかんないなぁ。それよりこの前ネットで見た流行りの書籍をチラッと読もうかなぁ…なんて考えながらわき見しながら歩いてたら、本棚の前に立ってる人にぶつかりそうになる。

 

「あ!ごめんなさい…」

 

謝りながら顔を上げたら、ぶつかりそうになった人は寿クンだった。

嬉しそうに笑ってる。多分ずっと気付かない私を見てた。

 

「りーちゃん、久しぶり」

 

「えーなんで?なんで本屋さん?まだ30分もあるのに」

 

「りーちゃん、絶対本屋さんに来ると思ったから」

 

「なんで私がここに来るってわかるの?」

 

「そりゃあわかるよ。俺も今、来たところ」

 

色々な感情全部吹っ飛ばして、ただただ嬉しさが溢れた。会いたかった、やっと会えた。元気そうで安心した。そしてやっぱりこの人が好きだ。

 

一緒に少し本を見てから、今日のデートプランのカフェに行く。エスカレーターを下るとき、私の前に立ってる寿クンの肩に抱きつく。

 

「ねぇ、こんなに長く会わなくて、私が心変わりするとか浮気するとか、全然想像しないの?」

 

「そんなこと全然考えなかった、りーちゃんは大丈夫」

 

「なんで大丈夫って思うの?」

 

「だって相思相愛だから」

 

真っ直ぐに私の愛を信じてる寿クンに、やっぱり私は全力で愛し過ぎて男を安心させてるんだなぁ…と反省する。私の心変わりなんて微塵も疑ってないみたい。

 

「すごく会いたかったけど、こんな俺じゃダメだなと思ってたからさ、特に夜になると気持ちが下がって、そんな時りーちゃんのLINEで励まされたんだ」

 

そう言って、スマホに記録している寿クンの日記を見せてくれた。いつ私がどんなLINEを送ったとか、通話で話して私が泣いたことも記録されてた。これを見る限り、確かに私は寿クンに甘々なのだ。もっとハラハラさせて追わせたいのに、自分の手の中全部見せてしまって、すっかり安心させてる。はぁ…なんだか私、とても自分が恋愛下手な気がしてる。

 

「りーちゃんとLINEするとすごく気持ちが楽になった、また会える日まで頑張ろうって、ずっと思ってたよ」

 

「でも、2週間会えないと溺れるって言ってた人が、2か月も私を放置してたのよ?」

 

「それは、出会った頃はこんな美人さんが俺と付き合うって信じられなかったから」

 

「今は信じられるから放置していい訳?クリスマスだってLINEくれなかったし、寿クンそれどころじゃないからと思って私も送れなかった。年が明けてもすぐに会えないし、年始のLINEするのも『おめでとう』って気分じゃないかなと思って躊躇って。でも待ってても寿クンLINEくれなかったし。私がどれほど寂しいと思ったかわかる?ねぇ、もう2月なんだよ。あけましておめでとうって時期をとっくに過ぎちゃったんだよ?」

 

「うん、わかる。ごめんねりーちゃん。あけましておめでとう」

 

「そうじゃなくて」

 

「うん、わかってる。待たせてごめんね、大好きだよ」

 

もっともっと沢山文句言いたいしワガママ言いたいし、何なら一度殴ってやりたいと思うんだけど、私は泣いてた。勝手に涙が溢れちゃって、ぎゅっと寿クンの手を握って、寿クンが生きてて良かったとつくづく思う。そっか、私は怖かった。本当に寿クンが無事で元気なのか、会うまでただひたすらに怖かった。

 

「去年からずっと会えなかったから、寿クンに渡したい物がこんなにあるんだよ。これは12月に行った〇〇のお土産でしょ、これは1月に△△に行ったお土産。それからバレンタインのチョコと、これは退院祝い」

 

「え、こんなに?退院祝いって何?え、なにこれ万年筆?りーちゃん何で俺が万年筆欲しかったの知ってるの?」

 

「私は何でも知ってるの。かっこいいでしょ、使ってね」

 

私があの駅の本屋さんに立ち寄ることを寿クンが知ってるように、私も寿クンが何を欲しいか、何故か知ってた。日々の会話の中にそのヒントは散りばめられていて、それを拾い集めて答えを出すゲーム、イベントとプレゼントは恋人達のためのモノだと私は思う。セフレなら、ヒントを探す気に多分ならない。

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Photo by Deleece Cook on Unsplash 

ホテルにチェックインして、退院祝いをスパークリングワインで乾杯して抱き合った。思えば最初の頃、寿クンはSEXも自信なさげで、色んなオモチャを買っては持参してたっけなぁ。私はオモチャがあまり好きじゃないから、気付いたら使わなくなってたけど。

 

寿クンは少し痩せてた。それから食も細くなってた。リクエストに応じて作ったサンドイッチも、全部は食べきれずに持ち帰ってた。精神的にはすごく辛く長く、孤独に戦っていたんだろう。男だから一人で戦いたいのは仕方ないと分かってる。それでも、もしも私が彼の家族なら、毎日傍でどんな風に励ますことが出来たんだろうか、など考えてしまう。不倫は不倫だし、誰とでも結婚してしまえば恋人ではなくなるのだから、今の関係が良いに決まってると頭では思うのに、やっぱり生死を引き換えにされると自分のできる事全てをやり遂げたくなっちゃうからダメよね私も。

 

久しぶりの寿クンの体温は、とても温かくて心地よかった。

生きてる、愛し合ってる。そのことがとても嬉しい。

 

チェックアウトして、再び一緒に少しだけお茶して、次の約束を決める。

去年の暮れから寿クンの職場が忙しいのもあって、次は1か月後。

 

「でも、きっとたまに会えるから良いんだよね」

 

最初に出会った頃、私の希望のデートのインターバルは月イチだったけど、寿クンは全然足りないと嘆き、休みを取っては私に会いに来た。その寿クンがなんだか分かった風な言い方するからちょっと可笑しかった。

 

「あんなに会いたがってた寿クンが、そんな風に言うとなんだか寂しいわ」

 

わざと拗ねて見せる。

 

「だってりーちゃんは、いつも傍にいるもん、俺の中には」

 

逞しくなって、少し眩しい位の寿クン。

初めて出会ってから1年と3か月、いつか巣立つその日まで、大事にしよう。

 

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万年筆はLAMYが好き。このサイトは細かい消耗品も取り揃えられててお気に入りです。

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