人妻の気紛れで自堕落な生活

人妻の夜遊びとか不倫とか時々仕事とか

後悔してる男~ジョージ

久々に『後悔してる男』シリーズ書いてみました。

現在の話ではありません、過去の回想記録です。

 

私が19歳か20歳だったか。もう遠い昔の男を思い出した。

何人か男を飼ってたけど、ジョージは特別な存在だった。

 

当時の私は男と同棲して、他の男の家に通い、妻帯者とたまに寝て、ジョージとも遊んでた。昼も夜も働いてた頃でどうやって時間を捻出していたのか謎だけど、ジョージは最初から私が男と暮らしてることを知ってて、男の不在の日に私が同棲していた部屋に通っていた。

一緒に暮らしてた男とは結婚するつもりだったけど、結局別れた。

 

ある日、間男ジョージと一緒にお風呂に入っていて、古いタオルに穴が開いてたのを見たジョージが

 

「お前は良い嫁さんになるよ」

 

と言って泣き出した。

私達はいわゆる‘‘セフレ‘‘の間柄だったはずなのに、いつの間にかお互い好きになりすぎてたと思う。ジョージとは仕事の関係で知り合った。私より4,5歳年上だったと思う。年上の男が風呂場で真っ裸で声を出して泣き出す姿に、何故か胸が熱くなって私も泣いた。

タオルの穴なんてただ使いすぎただけのことなのに、そしてズボラな私がタオルを捨て忘れてただけなのに、ジョージは‘‘倹約家の主婦‘‘になる私を想像したんだろうけど、それで泣けてくる男の恋心、今なら可愛いと思えるんだけど。

当時の私はジョージの気持ちに応えたくなってしまって、同棲していた男とはその後別れて、女友達の家に居候しながらジョージと正式にカレカノとして付き合い始めた。ジョージは会社の寮で暮してたし、私は女友達の居候だったから、いずれ一緒に暮らしたいねって言いながら、寮と居候してる友達の家を行き来して楽しかった。

 

だけどこの頃の私は、力いっぱい男を愛しすぎて男をメチャクチャにしてしまった挙句、男が私を捨てる前に私が男を捨てる、ということを繰り返していた。愛してるって気持ちは今も昔も変わらないんだけど、全力過ぎて相手が疲弊してしまう。自分という核が上手く持てなくて、男が正しいと思う事、男が喜ぶ事を選んでしまう。今もそれが間違ってるとは思わないけど、とにかくやりすぎてた。そして自分の愛がどれだけ溢れてるのかを伝えたくて、またその気持ちを受け取ってほしくて『愛の押し売り』になりがちだった。それなのに理由なく見捨てられ不安がいつも心の奥から湧いてきて、孤独な気持ちを紛らわせたくて他の男に抱かれたりもする。すごく不安定だった。

この頃の私には男に優劣があって、本命のジョージ以外は遊びの男。だけど遊びの男も挑発しまくって、結果的に男に付きまとわれたりして散々で、まだストーカーという単語が無かったので警察も雑な対応で、自業自得なんだけど酷い生活だった。私は他の男と遊んでることを特に隠しもせず、ジョージはそんな私を捜して夜を過ごした。ジョージが私を捜すことを諦めた日は、私がジョージを捜し歩いた。近づきたいのに、近づいたら磁石みたいに離れちゃう。いつの間にか、会えば罵倒しあって喧嘩も絶えないし泣いてばかりいた。それでも好きだった。それはきっとジョージも同じ気持ちだったと思う。

 

女は男の気持ちの変化を、男より早く察する生き物だ。

ジョージが私から離れていくのを薄々感じ始めた秋、知り合った男を口説いて家まで押しかけ、その日からその男の部屋で暮らし始めた。そしてあっさりとジョージを捨てた。別れ話の最後に、キスだけしてほしいと言われてしたキスの、ジョージの唇と涙の味は今でもはっきりと覚えてる。

そのままならジョージは特別な男でも何でもない、ただ若い頃私が愛した男の一人なんだけど。

 

それから2年後の冬、雨が雪になりかけてた夜に、私達は偶然再会した。

傘を差して歩いてる私の前から、ジョージが歩いてきた。それなりの都会に住んでて、それまで見かけた事もないのに、本当にバッタリと。

ジョージは私を見て泣いた。

 

「遠くから来る、その歩き方がじゅりんと似てると思ってた」

 

最初の一言。

 

「寒いから、熱燗飲まない?」

 

それが二言目。

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私はただ、ジョージに頷いてついていく。断るとか逃げるとか、何も考えられなかった。その頃私は別の男と暮らしてた。ジョージは年上の彼女と暮らしてた。熱燗を飲みながら近況を話して、私達がかつて泥沼の恋愛をしてたなんて、全く無かったみたいに爽やかな笑顔で。そうして熱燗を飲み終えてお店を出て、当たり前のように抱き合った。その流れがあまりにも自然で、私自身も夢を見ている気分だった。

覚えているのはジョージのセリフ

 

「相変わらずエロいな」

 

「ホントお前、肌が綺麗」

 

なんでそんなこと、今でも覚えてるんだろう。わからないけど。

 

それから数年、特にお互い何の連絡もしなかった。最後に会った時、私は自分の仕事と職場について話したけど、ジョージが私を捜すようなことは無かったし、私もジョージの職場に連絡をするようなことは無かった。まだ携帯が無い頃だから、連絡と言えば職場か家の留守電。

 

突然ジョージが再び私の前に現れたのは、私が26歳の頃。私の職場にジョージが尋ねて来た。夜に家に来てほしいと言われて、住所と電話番号を渡された。理由は聞かなかった、どんな理由でも私には行く選択しかなかったから。

 

ジョージは一人で暮してた。知らないうちに年上の彼女とは別れて、3つ年下の子と結婚して、そして離婚したばかりだった。1人暮らしのその部屋も引っ越してきたばかりで、まだ開いてない段ボール箱が数個置きっぱなしになってた。

私達は缶ビールを飲みながら、この数年の出来事を話したけど、主にジョージの結婚と離婚の話だった。奥さんが妊娠して流産して、そして浮気されて捨てられてた。どうしてこの人は私と言い元妻と言い、尻軽な女に惚れるんだろうな。

 

元妻から慰謝料を勝ち取ったと笑って話してるけど、すごく無理して笑ってるのはわかる。こうゆう時は、前みたいに何も言わずに抱き合えばいい。ジョージもそれを期待して、昼間私に会いに来たのだろう。だけど

 

「ごめん、私もう帰らなきゃ。あのね、私結婚するんだ。相手の人は奥さんも子供も捨てて私と結婚することを決めた人なの。だから今一緒に暮らしてる男って婚約者なの。私ね、ジョージの事、もう慰められないの。色んなもの捨ててでも私と結婚するって決めてくれた人に、これからはその人だけにする。だから…」

 

「何もしなくていい、別々に眠るのでも良いから、今日泊まってって…」

 

「無理だよ、家に帰らなきゃ」

 

「その旦那のために?」

 

「それもあるけど…私、ジョージと何もしないで泊まれる自信ない」

 

「だったら」

 

「だから、お願いもう無理だから。だって私、今でもずっとジョージが好きなんだもん」

 

自分の言葉に自分が驚いた。

そうなんだ、私はずっとジョージが好きだった。そして今でも好きな男。私が複数恋愛者と気付いた最初の瞬間。

それまでも男は何人もいたけど全員愛してる訳ではなくて、愛してる男が一人と多数の遊ぶ男って明確な住み分けだったのに、実は出会ってからずっと私はジョージが好きだったし忘れてなかった。多分私が愛した初めての男だと思う。そしてこの時、既に私は現在の夫の事も愛してた。二人の男を愛してることに何の矛盾も感じないことに、自分が一番驚いていた。

 

もうジョージは引き止めなかったし、私も何も言わなかった。

そのまま部屋を出て、また数年会わないで、その間に私は結婚して進学した。

 

たまたま大学の友人がジョージとも繋がりがある事が分り、その後友人を交えてジョージと飲んだことがある。

その席で友人に

 

「なんで二人は結婚しなかったの?今もすごく仲良さそうなのに」

 

と言われて苦笑い。あんなに激しく罵り合って喧嘩した恋愛は二度とない。なのに仲良さそうに見えるのか。いや実際、友達として仲良いんだろうけど。

私は夫と結婚して、夫が私を放つまでは貞淑な妻だったので、それからジョージと何もなく、たまに友人として飲むことがあった。お互い携帯を持つようになってから電話番号を交換して、暫く連絡を取り合ってたハズだけど、いつの間にか途絶えて連絡先もわからなくなってしまった。

 

夫が私を放った時、一番最初に思い出したのがジョージ。当時の友達や、SNSでジョージを探し出そうとしたけれど結局見つけられなかった。もしも会えたら、自棄某杭になってたのかな…とか、あの時一人暮らしの部屋に私を呼んだジョージも、こんな気持ちだったのかな…とか考えるけど、タラレバは無い。

 

死ぬまでにもう一度再会出来たら良いなと思う。あの冬に、偶然バッタリ会えたみたいに、もう一度彼に会いたい。

 

★カコノオトコシリーズ★

 

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