人妻の気紛れで自堕落な生活

人妻の夜遊びとか不倫とか時々仕事とか

可愛いの魔法

さいころから大人びた子だったし、可愛いキャラでもなかった。

ピンクよりブルーの服の方がよく似合う、猫目でツンとして笑わない子、それが私。

 

11歳で高校生と間違えられて、16歳では街頭インタビューで『選挙に行きましたか』と尋ねられ、18歳で三十路の美容師さんに髪を切られながら‘‘同年代の悩み‘‘と前置きされて彼氏の愚痴を聞かされてた。

ずっと顔立ちは変わらないから、30歳位までは老け顔。それ以降は若く見られるようになったけど、大人びた顔立ちというのは‘‘可愛い‘‘とは遠い存在。

 

今でこそ、厚い唇もアーモンド型の猫っぽい目も、個性的とか美しいとかモード系とか言われるけど、私が思春期の頃は大きな二重のぱっちりした目や、薄い唇が可愛いと言われてた時代。

18歳でメイクをするようになって、猫目にアイラインを引き、元々長い睫毛にたっぷりのマスカラを施したら、色っぽいとか美人とか言われるようになって、元々あまり好かれない同姓に更に嫌われるようになった。

 

生きていくために『笑顔』という技術を手に入れて、人が良さそうに笑えるようになって、強い者にはあざとく媚びて生きてきた。そうしてるうちに‘‘美人できさく‘‘なんて言われるようになって、やっぱり可愛いとは無縁のところにいたし、私自身は元々それほど美人の土台でも無い事を知ってるので、みんなメイクで作られた私を褒めそやして、ほんとバカだなと思ってた。

 

20代半ばから、私の褒め言葉は‘‘色っぽい‘‘に変わる。

女として成熟してきたのだと思う。

人妻のブランドを持ってからは、色っぽいが‘‘エロい‘‘になった。

エロいはちょっと下品で好きじゃないけど、私には合ってる気もしてた。

最近は‘‘魅力的‘‘とか‘‘美魔女‘‘なんて褒め言葉も多くなってきたかなぁ。

 

でも、もしかしたら私はずっと、可愛いと言われたかったのかもしれない。

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ピンクの服が着たかった。

フワフワの巻き髪にしたかった。

背が小さくなりたかったし、学芸会ではお姫様になりたかった。

レースがいっぱいついたワンピースが欲しかった。

全部全部、私が諦めた‘‘可愛い‘‘

 

綺麗とか賢いとかより、可愛いって最強だと思う。

初恋の男の子が『小さくて可愛い子が好き』って言って、死ぬほど自分が恥ずかしかった。ああ、大きくて可愛くない私は、人を好きになんか、なっちゃいけない。

 

時が過ぎて、背の高い女はカッコいいとか猫目はクールとか、暑い唇はセクシーと言われ始めて、そこに何となく私の居場所が出来た。その頃はもう可愛いと言われるような歳でもないし、もうすっかり忘れてた。

 

星野クンは、最初に会った時から私を『可愛い』と言ったけど、他のボキャブラリーが無いから、とりあえず可愛いって言う人なんだと思ってた。今の若い女の子もそうでしょ、なんでも『カ・ワ・イ・イー!』って言えば褒めてることになるみたいな使い方。

 

 でも二度目に会って色々話したら、語彙力はそれなりにある人と分かった。

それから多分‘‘可愛い‘‘と言われる度に私が照れるから、面白がって‘‘可愛い‘‘と連呼するんだろうと思った。つまり‘‘可愛い‘‘に意味はない。私の反応が面白かったのだろう。

 

三度目、本当に嬉しそうに私を『可愛い、可愛い』と何度も言う。

本当に可愛いと思ってるのかな、私の事を?

 

そして先日の四度目のデート。

私はジワジワと星野クンに恋をし始めてる。

だから会うのも照れくさくて、何度も星野クンに

 

「ねぇ、嬉しい?」

 

って尋ねたりした。

その度

 

「嬉しいよ、俺の顔に書いてあるでしょ。じゅりちゃん可愛い」

 

と言われる。

私も嬉しい。そう言いたい。だけど可愛いと言われると照れて言えなくなる。

 

お箸を持つたび『可愛い』

料理を取り分けるだけでも『可愛い』

お酒を選んでると『可愛い』

ちょっと星野クンの顔をみただけで『めっちゃ可愛い』

 

こんなに可愛いって言われたこと、人生で初めてかも。

だから

 

「私のどこが可愛いの?」

 

と尋ねてみた。

 

「今、その瞬間の表情とか。あ、それそれ、めっちゃ可愛い」

 

「えーもうふざけないで、可愛いってキャラじゃないよ私」

 

「そうゆうとこもさ、可愛いなぁって思うんだよ」

 

ずっとご満悦な星野クン。

割と何でも褒めてくれるんだけど‘‘可愛い‘‘ってワードが私のツボだと分かってて言ってるよね?

 

それでも‘‘可愛い‘‘には魔法がある。

ホテルで抱かれてる間中、ずっと『可愛いよ、可愛い可愛い』って何度も言われてると、本当に自分が小さくて可愛い存在みたいな気分になってくる。

もうピンクの服も、巻き髪も、レースのワンピースじゃなくても、裸のままで今の私で可愛いのかな~?なんて思えてきた。

 

自分を‘‘可愛い‘‘と自分で認めることが出来ると、なんだか可愛らしさが溢れてくる気がする。技術の笑顔じゃなくて、なんだか微笑んでしまうような優しい気持ち。

冷静になって考えたら、アラフィフのオバサンが可愛い訳ないけど、星野クンの前では可愛い女でいられるというか。可愛い私を赦すことが出来るというか。

 

もう忘れてた私の欲しかったものが、不意に手に入る奇跡。

私は‘‘可愛い女‘‘で在りたかったハズなのに、いつの間にか去年までは‘‘頑張って男に尽くす女‘‘になってた気がする。

 

自分の価値を信じられず更なる付加価値を自ら付けて、それでも足りない気がして自分から去らないだろうダメな男を選んで、デート代を支払ったりしてちょっと気を大きくして、男を飼い馴らしたつもりで満足したフリをしてた。

渦中にいるときはそれでも楽しくて幸せでわからなかったけど‘‘可愛い‘‘が手に入らないから‘‘かっこいい‘‘を目指してたんだと思う。精神的にも経済的にも自由で自立してる私、という型にハマろうとしてた。

まぁ実際、デート代を男の前で支払う瞬間、何故か勝ち誇った気分になるのは確かなんだけど。くだらない男と付き合ってたし、くだらないことで自分を保ってたなぁと今は思う。

今の私の男達は、だいたい男が支払ってくれる。シマリス君は絶対にさせてくれないけど、たまには私が支払うこともある。

 

別に男に奢られたいわけじゃないけど、やっぱり奢ってもらえるのは女性扱いされてる気がして、単純に嬉しい。

嬉しいって言ってる私を『可愛いね』って言われると更に嬉しい。

そんなシンプルな事も忘れちゃってた。

 どこまでひねくれてたんだろうな。

 

‘‘可愛い‘‘って言われて、それを自分の中に取り込むと、ひねくれてた私のポーズが緩くなって抜け落ちちゃって、素直に望んでたことを欲しいと言えるし、手に入るようになったような。

これは魔法だな、もうかなり長い事染み付いてた私のポーズを溶かしちゃう。

そんな魔法をかけてくれた星野クンは、まだしばらく私の男にしておきたい。

 

「また会える?」

 

答えは分かってるけど、帰り際に尋ねる。ちょっと弱気な声で(演技)

私、なかなか可愛いよね?

 

「愚問だな。じゅりちゃん可愛い」

 

笑ってそういう星野クン、キミは魔法使いだよ。

最高だよ。

 

でもちょっと危機w まぁだからってTwitterに鍵かけたりブログ止めたりしないんだけど、私もリスキーな女だよねw↓

 

・・・

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