捨て猫に懐かれちゃった子供の頃を思い出す。
家では猫を飼えないのに、捨て猫がついてきちゃった。
でも可愛いから私も走り去れなくて、ついてくる猫を何度も振り返って、家の前でどうしていいのかわかんなくなって泣いちゃった。
その猫は、結局友達の家で飼われることになったんだけど、星野クンを見てるとその猫を思い出す。
登下校の道で、沢山の子供たちが歩いてるハズなのに、見捨てられない私を選んでついてくる。当時の私は猫はそれほど好きじゃなかったし、家には犬がいて猫を飼える状況ではなかったし、母が猫が大嫌いで、そもそも猫を拾っちゃったら大変とわかってるから、私はその猫を抱いたり可愛がったりしなかったのに。
タイプでもなく嫌いでもない顔に、ノリの良さと鋭い勘と、二度のリスケに屈することないファイトで、何となく私の心の隙間にスルリと入り込んでしまった星野クン。
お互いに一度ずつのリスケ、仕方ないけどもう会わないと思ってたのに、連絡してくれて再会した。試しに寝てみたら思った以上に相性が良くて、LINEのペースも丁度よくて、いいかげんな私に‘‘良い加減‘‘の距離感を保ってくれる。
それは彼が耐えて我慢してるのか、それほど私に思い入れが無いから出来るのか、そもそもそうゆう距離感の人なのかよく分かんないけど、私にとっては‘‘好い加減‘‘の都合の良い男。
星野クンもまた、私と同じ位に用心深く、だけど私と同じ位に間抜けな天然で、私と同じ位に直観頼みなのは分かってた。
この夏の私の変革期に出会ってるので、やや私が不安定でもあり、自分の直感を信じきれない所もあって悩ましかったけれど、身体の相性は嘘はつかないだろう。だから彼の事はそれなりに信じることにした。
ねぇ、今度2泊3日で夫がいないんだけど、その間のどこかでウチに遊びに来ない?
行く行く♪
星野クンって、思慮深いのか浅はかなのか、ホント謎。
でもわかる、直感で行くと決めたんだ。
そんな訳で、二つ返事でウチに来ることに(笑)
自宅に男を招き入れたことは何度もあるけど、大概の男は断ってくるか渋る。
そりゃそうだ、わざわざ人妻の生活感ある家の中を知る必要はないだろうし、万が一のことを考えたら恐ろしいのだろう。何もなくても『お誘い受けただけでも背徳感で胸いっぱいになった』って言われたこともある。
『大人なんだからケチらないでホテルに行こう』って言われたこともある。私としては別にケチるつもりではないんだけど。
自宅が好きでホームパーティもよくするから、同じノリで男を家に招きたいだけなんだけど、なかなかご理解いただけない。寝取り願望がある男は別らしいが、断っておくけど夫婦の寝室に男を招いたことは無い(そうゆうプレイ願望もあるらしい)
この時点でまだ私の本名も知らないというのに、もしも夫がヤ〇ザで美人局だったらどうするんだろうな。誘っておいて言うのもなんだけど、星野クンってバカなのかな。
まぁ本人と会ったらどこまで考えてたのか聞いてみよう。
やっぱ星野クン、性格も猫っぽい気がする。気まぐれで楽しさ優先で。
そう思って当日。
初めて我が家に来た星野クン。かなりテンションが高い。
一応、私の仕事部屋をみてもらってからリビングも見て、どっちで寛ぎたいのか尋ねたらリビングが良いというので、そのままリビングのテーブルに座ってもらった。
「素敵だね、いいインテリアだね、ウッディな感じが好きだよ。絵が好きなの?飾ってある絵はよくわかんないけど、なんかいい雰囲気だね。あとさ、このBGMっていいなぁ。なにこれアレクサ?えーすごい」
見るもの聞くもの褒めてくれる(笑)
我が家はすっごい綺麗にしてるって訳じゃない。程々に生活感もある。
リビングには、夫が私達夫婦の写真をあちこちに飾ってるので、女友達には『新婚家庭みたいで居心地が悪い』と言われる。だから星野クンが嫌なら私の部屋で飲もうと思ったんだけど、まるで気にしてなさそう。
それより、若い頃の私のウェディングドレス姿とか、どこか旅先で撮った写真を面白そうに見てる。
「じゅりちゃんって若い頃から綺麗だね、旦那もやっぱ渋メンだよなぁ」
と普通に友達目線(笑)
最近星野クンは私の名前を一文字減らして『じゅりちゃん』と呼ぶようになった。ちょっと照れ臭い。
浅漬けとか金平牛蒡とかポテトサラダとか卵焼きとか、ちょっとした立ち飲み屋メニューのツマミを作っておいたので、オードブル風に盛り付けて出して、ビールで乾杯。
星野クン若いんだから、もっとお肉とか揚げ物とか、高カロリーなツマミも作っておくべきだったかなぁと思いつつ、お互い酒好きなのであまり食べずにお酒が進む。
「家に誘う人妻もワルだと思うけどさ、二つ返事で来る俺もどうかしてるよね。ねぇ、他にも男を呼んだことはあるの?」
「誘ったことはあるよ、大抵ビビられるよね」
ここへ男が来たことがあるか無いかは言わない。
嘘はついてない。
「まぁそうだよね。俺さ、じゅりちゃんなら大丈夫だと思ったの。絶対ちゃんとリスクヘッジしてるんだろうと思って。それにさ、俺はじゅりちゃんの背景全部知りたかったんだ。知っておきたかったの、色んなこと全部」
「全部なんか言わないよ。だいたい星野クン、初対面で私に『男いるでしょ』って言ったじゃん。それくらい信用ならない女だよ」
「でもあながち間違ってなかったでしょ?色気は漏れ出すもんだからなぁ。でもそれだけじゃない、じゅりちゃんの言わない背景も、俺は全部抱きたいの」
「ねぇ、それは私の事、好きって言いたいの?言っても良いよ、今日だけね」
「うーん、否定できない。好き、かなぁ…」
そう言われて顎を持ちあげられてキスをする。
キスの相性はとても良い。本当に一度唇を重ねると止められなくなるほどにフィーリングが良い。
何度も何度もキスをする。
少し舌を絡ませる。
もっと長くキスをすると、もうお互いにスイッチが入ってしまう。
気付いたらもう、星野クンの手が私の腰に回って、エプロンの紐が解かれ、スカートのファスナーを下げられていた。
「どこで抱けばいいの?」
「ちょっと待って、私の部屋で」
一度身体を離して部屋を移動して、ソファベッドを広げる。
ライトを消して、ナイトランプを灯して、BGMをかける。
その間に星野クンはお酒を注いで部屋に持ってきてくれた。
「いつもここで一人でゆっくりしてるの?」
「私の部屋だからね、仕事したり、夜に映画観たり」
「この部屋も良いよね、じゅりちゃんの匂いが感じられるような」
「私、匂いする?」
「いやホントの匂いじゃなくてさ(笑)キミがここにいた形跡が、部屋中にあるような」
もう一度キス。
ゆっくりとベッドへ。
「俺は、今日は全部抱きに来たんだよ」
「全部って何?」
「キミの背景にあるモノ全部。じゅりちゃんの旦那の事も含めて、じゅりちゃんが言いたくないことも全部全部、俺が抱きたいから来た」
「私に騙されてるかもしれないのに?危険だと思わなかったの?」
「たとえじゅりちゃんに騙されててもいいよ。全部抱きたくて来たんだから」
強く抱きしめられながらそう言われて、私はポロポロと泣きだしてしまった。
なんで泣いてるかわからない。
でも誰かに、私のすべてを預けたかった。
言えない見せられない私の裏の裏も全て、全部を掬ってほしかった。
「可愛いよ。可愛い可愛い…」
言葉なんか飾り。
真実じゃない。
それでも。
泣いてる私にキスしながら、ギュッと抱きしめてくれるこの体温。
今はこの温かさに甘えたい。
この人は、私の本当の名前さえ知らない。
だけど今は、最も心が近いところにいる。
誰も知らない私の核を見てる、見える人。
そして、私がずっと待ち望んだ人だ。
そう思った。
(続く)
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