一人旅に避暑地へ愛車ででかけた、自分的備忘録。
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静かにディナーをしたいので、夕食は遅めの時間にしてもらった。
持参したワンピースを着て、軽く髪をハーフアップにまとめて、アクセサリーをつけて薄く化粧をする。フレンチを一人で頂くのは久しぶり。私はおひとり様のエキスパートだから寿司屋でもラーメン屋でもフレンチでも一人で入れるけど、一人だからこその楽しみ方を味わいたい。TPOに合わせたドレスアップもそのひとつ。
窓際の美しい席に案内された。
どの席にも小さくお花が飾られて、キャンドルが灯ってる。
綺麗なロイヤルブルーのテーブルマットに、白い食器が映える。
私の一番好きな色、ロイヤルブルー。密かにテンション上がる♪
離れたお隣の席は若いカップル。女の子はやはりワンピースでドレスアップしている。
私は室内履きのバレエシューズだけど、彼女はハイヒールのサンダル。うーん、彼氏同伴だと、さすが気合いの入れ方が違う(笑)
だけど彼氏は短パンにTシャツ。彼女可哀想だな…さすがにリゾート地でも、海外だったらドレスコードで入店不可のヤツだよ、短パンTシャツ。彼女もさすがに言えないよね…こうゆう時、世間を知らないことは罪ではないけど悲しいと思う。私も知らないでミスしてたら誰か教えてほしい。でも言えないのが世の常よね。
更に残念なことに、遠くの席の女性3人連れは、かなりカジュアルな装い(ズボンは多分ホテルの部屋着)に、足元はホテルのスリッパだった。最近は高級ホテルでも履物をチェックしなくなってきたけど、あれってなんだかガッカリする。せっかくのディナーなのにね。
食事はどれも美しく美味しくて、サーブも完璧だった。
最初に出された食前酒が甘くて殆ど残した私に、ソムリエバッチを付けた品の良い男性が
「食前酒、少し甘すぎましたか?」
と尋ねてきた。
「ええ私には。でも食前酒なので、どなたでも楽しめるように甘くても良いと思いますよ。ただ、私には少し量が多いかな。ダメですね、私みたいな飲兵衛は…」
既に私は地元の白ワインを頂いていたのだけど、グラスが空になりそうなタイミングで、その男性が別のグラスに白ワインを持ってきてくれた。
「食前酒の代わりと言っては何ですが、今召し上がっていただいているワインと同じものです。よろしかったら…」
「あら、そんなつもりじゃ…」
「いえいえ、私どもは、これくらいしかできませんから、お楽しみください」
そう言って微笑んだ。
なんだかその笑顔にキュンとした。
今はホテルの方々全員マスクしてるので顔立ちはよくわからないけど、その微笑んだ瞳がとっても優しくて、よく見たら高身長で手足が長くて、すごく素敵だなぁって思っちゃった♡
今の私はこれくらい細やかな恋とも言えない恋をして、キュンとなって嬉しい気持ちになる程度が合ってるのかもしれないなぁ。
自分の恋心というのが過去に囚われすぎていることに、今更ながら幻滅しているから。
彼氏のことも、シマリス君のことも、捨てた愛人のことも、疎遠になってる年下1号2号のことも、ほぼメル友状態のペットのことも。
みんなみんな、私は彼等というフィルターを通して、自分の過去に固着してた。
それが悪いとは思わない、ただ、今生きてる彼等を、ちゃんと見つめてはいなかったことに、そんな自分に失望したんだ。
そうして一度自分の中で失って壊して、もう一度立て直して、今こうしてそれを確認する一人の時間を過ごしてる。
美味しくて綺麗に盛られたお料理をひとつずつ味わうように、男達の顔を思い浮かべながら、自分の気持ちとこれからを自分で決めている。
いつだって、相手がどうしたいのかじゃなく、私がどうしていきたいかだけ。
その決心を決めるだけ。
前菜の冷菜、温製オードブル、スープ、サラダ、メインディッシュにソース、ちょっと個性的なシメのご飯に、最後は美味しいエスプレッソとデザート。
お料理だってこんなに色々、それに合わせてお酒も色々。男だって色々でいいじゃんね…と一人で思って笑う。
だけど私は、お料理の背景に『おふくろの味』的なエッセンス(どちらかというと父親に傾倒してるから『おやじの味』的な?)を匂わせたかったんだなぁ。バカみたいだし古臭い。ダサかった。
今日からは創作フレンチっぽく男を並べよう。じゃあ、誰が前菜かなぁ…と思いながら、また一人でニヤニヤ。
「お酒も進んで楽しそうですね、お食事はどうでしょう?お酒は…最後は泡ですか?」
先ほどのソムリエバッジ。
んーこのタイミングで話しかけられると照れる。ニヤニヤしてたし。
既に私は白から赤にワインも変えていた。
飲みすぎ?ピッチ早すぎ?でも一人だからつい飲んじゃうよね。
ほんとにただの酒好きだから、あまり突っ込まれたくないんだけど。
「最後に泡推しって珍しいおススメですね。フレンチじゃなかったら、最後は太宰治を気取ってビール(麦酒)なんですけど」
*太宰治は作品の中で、麦酒は最後のシメに飲むと何度も書いている
「おお、文学的に攻めますね。``シメはビール‘‘って通ですね。地ビールもありますけど、地元ウィスキーのハイボールもおススメですよ。僕個人的には、お酒はあまりルールやマナーに囚われずに、お好きなものをお召し上がりいただくのが良いと思います。そうゆう僕は、実は日本酒が一番好きなんですよ」
そう言って笑った。
なんか素敵なソムリエさん。
ルールやマナーに囚われず、好きなものを…好きな男をその時々に。
私の脳内はすっかり男の捌き方でいっぱいだったけど、楽しいディナーだった。
最後にお勧めのハイボールを頂いた。
めっちゃ可愛いカクテル風にフルーツが盛られてた。
美味しかった。
ここに来てよかったなぁ。
そう思いながら部屋に戻って、また温泉に入って、また飲んで。
一人の夜は静かに過ぎていく。
(続く)←長いね、でも多分次でラスト💦
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