3年前に夫が「俺、男の現役引退したい」と言い出したのがきっかけで、私の不倫活動が始まった。今となってはこの「男の現役」って、私を抱くことができなくなったってことだけで、相手が違えば抱けたのではないだろうか。若しくは今も抱く女は別にいるんじゃないだろうかと思っている。まぁ別に良いんだけど、今となっては。
わたしより13歳年上の夫は、元々それほどセックスが強い方ではなかったのかもしれない。それでも夫婦生活は数か月に一度は続いていたし、私もまさか不倫に走るとは思ってもみなかった。20代で結婚してからずっと、自分はもう夫以外と身体を重ねることは無いだろうと思っていたし、アラフィフの今、自分に市場価値があるとは思ってもみなかった。
年々夫に抱かれることが少なくなり、私も寂しかった。
今も寝室は一緒だし、同じベッドに寝ているけれど、何気なく夫にその気のサインを送っても背中を向けられることの屈辱。
「今月抱かれなければ浮気してやろう」と毎月思うのに、なかなか実際に浮気のひとつも出来ない。そもそもどこで男と知り合うんだろう。私はもすでにお金を支払って誰かに抱いてもらうような価値しかないんじゃないだろうか…そんなことばかり考えていた。
諦めてこのまま枯れていくのだろうか。女として終わっていくんだろうか。
夫はそれなりの歳だが、私はまだ若い。身体も男を欲してるのに、結婚制度のせいで自分の欲望を封じ込めたまま年老いていくんだろうか。
そんな事ばかり考えていた。
自分に自信もなかったので、出張ホストや女性向けの性感マッサージをネットで検索したりしていた。男に抱いてもらうのって、いったいいくら予算を組めばいいんだろうか。男は私を抱くのは嫌じゃないんだろうか。私の希望はどれくらい叶うんだろう、例えば男の年齢や好みの顔立ちなんかは指定できるのか?
想像のなかで、私は何度も男を買い、お金で抱いてもらって欲を満たしていた。
淋しい。本当の男のぬくもりが欲しい。
よく「セックスじゃなくても添い寝だけでも十分に幸せ」などということを聞くけれど、私は全くそうは思わない。添い寝だけで自分に欲情してもらえないのは恥ずかしいし悲しい。
隣で夫が寝ているベッドで、自分で自分を癒す。猛烈に悲しかった。気持ちが良くなればなるほど悲しくなった。こんな気持ちも、このまま生理が上がって現役の女じゃなくなれば感じなくなるんだろうか。そんなことばかり考えていた。
今考えると、なんてバカなんだろうと思う。
バカで一途で可愛かったな。今はただのアバズレだけど。